古いiPhoneが遅くなる問題の集団訴訟、ユーザー側に勝ち目は?米弁護士ら分析

曹 操 2018/01/04

古いiPhoneのパフォーマンスを抑制していた問題で、世界各地のユーザーが、Appleを相手取った集団訴訟を起こしています。しかし、企業関係の訴訟に詳しいアメリカの弁護士らは「ユーザー側が勝つのは相当難しいだろう」とみています。

Appleを相手取った集団訴訟、2017年末時点で世界で15件

2017年12月にAppleが、バッテリーが経年劣化したiPhoneのパフォーマンスを抑制していたことを認めると、直後にユーザーによる集団訴訟が起こされました。

「Appleはユーザーをだましていた」「古いiPhoneを買い替えたことで経済的損失を被った」などと主張する集団訴訟は、アメリカをはじめイスラエルなど世界各地で起こされ、2017年末の時点で15件が確認されています。

しかし、Mashableが民法や会社法を専門とする複数の弁護士に意見を聞いたところ、「ユーザー側が勝つのは難しいだろう」と多くの弁護士らが述べています。

鍵を握るのは「Appleの意図」

企業関係の訴訟に詳しい、ニューヨーク州ブルックリンのジャスティン・T・ケルトン弁護士は、整理すべき論点は2つある、と指摘します。

ひとつは「Appleが意図的に欠陥のあるiPhoneを販売したのか」、もうひとつは「Appleは消費者を欺こうとする意図があったか」、だといいます。いずれも、Appleの意思が問われます。

同じく企業関係訴訟を専門とする、テキサス州ヒューストンのフィル・グリフィス弁護士は、何人かの判事は訴訟を却下せずに受理するだろうと予測しています。

Appleは、iPhoneの電源の使用パターンを変更するソフトウェアをユーザーに配布したことを認めています。問題は、その動機が何か?ということです。私たちは、Appleがアップデートの本当の理由を説明するまで、気付かなかったはずです。

iPhoneの速度低下と買い替えの因果関係の立証は困難

国際テクノロジー法協会(International Technology Law Association)の理事でもあるイリノイ州シカゴのチャールズ・リー・マッド・ジュニア弁護士は、原告であるユーザー側にとって、iPhoneのパフォーマンス低下と買い替えの関係など、具体的に立証するのが難しい事項が多い、と指摘します。

Apple側と法廷で争う場合、原告側は、相当数のユーザーがiPhoneの動作が遅いことだけを理由にiPhoneを買い替えたことを示さなくてはなりません。これは論理的にかなり難しいと思われます。

また、原告側は、他の要因ではなくAppleのソフトウェアによって、どの程度Phoneの動作が遅くなったかを正確に推定し、その変化がユーザーがiPhoneを買い替える原因となったことを証明しなくてはなりません。

また、問題解決の方法として、消費者がiPhoneの買い替えではなくバッテリー交換を選択することも示す必要があります。

マッド弁護士は、「バッテリー交換は、そう簡単なことではありません。問題解決のために多くのユーザーがiPhoneのバッテリーを交換するとは思えません」と述べ、訴訟の成立そのものについて懐疑的です。

原告側の主張には論理的な弱点も

原告側の主張のうち、「パフォーマンス低下の機能がユーザーの同意なしに導入された」ことも示す必要があるのも論理的な弱点だ、とマッド弁護士は指摘します。

個人ユーザーはiOSのアップデートを強制されるわけではなく、アップデート時には利用規約に同意しているからです。

さらに原告側は、Appleが意図的にiPhoneを悪くしたことを示す必要があります。一方でAppleは、バッテリーが古くなったiPhoneのパフォーマンスを抑制していたのはiPhoneを安定して使えるようにするためだった、と説明しています。

iOSのアップデートによって、古いバッテリーを持つ特定のiPhoneの動作速度を引き下げるのは、経年劣化したバッテリーが引き起こすシャットダウンや、その他異常な動作を防ぐ目的のためです。

Appleは訴訟に勝っても企業イメージ悪化のリスク

もし、Appleが訴訟に勝ったとしても、Appleは無傷ではいられません。Appleにとっては、訴訟関連費用の負担もさることながら、企業イメージの悪化というリスクも背負うことになります。

Appleは、環境問題や多様性といった社会的問題に積極的に取り組む、イメージの良い企業として認知されています。また、最近のApple Storeは単なる小売店ではなく、地域コミュニティに開かれたスペースとしての役割も提供しています。

「もしAppleが、購入後数年で劣化するようにこっそり細工する企業、というイメージができてしまうと、企業としての見られ方に相当な影響を及ぼすことになります」と前出のケルトン弁護士は語ります。

ケルトン弁護士は、他の企業について「適切に、透明に、公正に経営されていれば、恐れる必要はないでしょう」と述べつつ、今回の一連の訴訟が、消費者をだますような行為をしている企業に目を覚まさせるきっかけになるのではないか、とも語っています。

Source:Mashable
Photo:iFixit
(hato)

この記事を書いた人:

曹 操

あるデザイン会社を勤めています、日々はウェブデザイン関連のコーディングやグラフィックデザインの仕事しています。

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